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加害者に賠償よりも反省と罪の償いを求めるとき

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犯罪の被害に遭った方々の心情はさまざまです。

特許権や著作権の侵害事件ではやはり権利侵害による賠償問題が最大の関心事ですし、再発をどのように防いでいくかといった防衛策が興味の対象となります。

例えば、暴力事件の被害者の方は、金銭による賠償よりも、事件を起こした本人が深く反省し、しっかりと罪を償うことを求めるケースが見られます。

さまざまな被害者心情

人は他の誰かから不当な損害を被ったなら、賠償を求める権利を持ちます。

犯した行為の内容によっては、加害者は刑事罰を受けることになります。
この「犯した行為」が過失によるものであったなら、被害者も「わざとやったことではなし…」という気持ちになりやすいものです。

「秘蔵の高価な壺を同好の友人に見せていたら、友人がうっかり手を滑らせて落として割ってしまった。」
このようなケースでは適正な賠償請求はしても、それ以上に事を荒立てることはあまりないでしょう。ですが「わざと床に叩きつけて割ってしまった」となれば、話がまったく違ってきます。

一方で傷害事件などになると、被害者の感情はより重く、強くなるでしょう。

「理不尽な暴力を受けた」

「いわれなき理由で傷つけられた」

このようなケースにおける被害者の心情は複雑で、時に「賠償よりも、加害者本人にしっかり罪を償わせ、反省させたい」という思いも生まれます。

罪の償いを優先するなら示談の拒否を

何らかの犯罪被害を受け、加害者が特定された場合には、被害者は加害者に慰謝料等も含めた賠償金を請求することになります。
また、加害者は刑事裁判によって審理され、犯した罪の内容や反省の程度、更生の可能性などが勘案されたうえで刑事罰の量刑が決められます。

つまり賠償金は被害者に与えた被害の個人的な補償であり、量刑は犯した罪に対する国家からの制裁という意味を持ちます。そして被害者への賠償は民事事件として扱われ、加害者への量刑は刑事事件で扱われるものでもあります。

このように、賠償と量刑は手続上まったく別々のものではあるのですが、実は密接に影響し合っています。その最も大きな要素が「示談が成立しているかどうか」です。

加害者と被害者との間で示談が成立しているということは、多くの場合、犯罪被害の補償について合意できたということになります。これは加害者の刑事裁判において、加害者にとって非常に有利な材料になります。

もちろん犯罪の内容にもよりますが、示談が成立しているために数年の実刑判決が出るところを執行猶予が付いたり、量刑が一段階軽くなったり、場合によっては不起訴となることもあります。
それだけ被害者への補償という事実が、量刑の判断に影響を及ぼしているのです。

加害者に厳しい懲罰を与え、反省を促したいという場合には、加害者を利する行為を行わない、つまり示談や和解に応じなければ良い、ということになります。

「前を向く」ことが必要とされるとき

示談や和解に応じないとなると、その事実は加害者の量刑にも少なからず影響します。
ですがその反面、裁判そのものが長期化し、賠償がそれだけ遅れるということは覚悟しなくてはなりません。

またこうした行動の結果として量刑が軽減されなかった場合、加害者自身が反省を深めるのではなく被害者を逆恨みする可能性もあります。

加害者は犯した罪を相応の刑を受けることで反省し、償うのが本来の姿です。
しかし、「あいつが示談を拒否したために、実刑判決を受けるはめになった」という思考から、お礼参りをされる…極めて理不尽な話ですが、こうしたケースは実際にあるのです。

犯罪被害者は守られるべき存在ですが、適正な賠償と適正な量刑が示されたら、被害者自身が前を向くことも必要かもしれません。

なお現在の司法制度では、一定の条件を満たせば被害者自身が裁判に参加し、被告人に質問したり、事実又は法律の適用について、意見を述べることができます。
ですがこれは「被害者自身が実際に被害を受けた自分の意見を法廷で述べ、裁判に参加する」という意味合いが強いものです。

「賠償よりも反省と罪の償いを求める」という点では、直接的・効果的な方法とはいえませんので注意しておきましょう。

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